無線機の向こうにいる「相棒」を信じる。片側交互通行の極意と2月の静寂

交通誘導警備という仕事の中で、最も技術と精神力を要する業務の一つが「片側交互通行」、通称「片交(かたこう)」です。特に視界が悪く、寒さで思考が鈍りやすい2月の現場において、この業務は単なる車の誘導を超えた「心理戦」であり「チームプレイ」となります。
今回は、一台の無線機を通じて結ばれる警備員同士の絆と、安全を担保するプロの技術について深掘りします。
1. 「姿の見えない相手」と呼吸を合わせる技術
片側交互通行の現場では、多くの場合、相勤者(パートナー)の姿はカーブの先や坂道の向こう側に隠れて見えません。私たちが頼りにできるのは、スピーカーから流れるノイズ混じりの声と、自分の目で見ている交通流だけです。
2月の空気感と音の伝わり
2月の早朝や夜間は、空気が冷たく乾燥しているため、遠くの車の走行音が驚くほどクリアに聞こえることがあります。ベテランはこの「音」で、無線が来る数秒前に「あ、次は大型が来るな」と察知します。
- 無線の第一声: 「こちら下り、大型3台、最後尾シルバーの乗用車で流しました。どうぞ」
- 受け手の判断: この短い言葉の中に、現場のすべてが詰まっています。大型が3台いれば、加速が遅いため、反対側を放流するまでのタイムラグを長めに取る必要がある……。こうした計算が瞬時に脳内で行われます。
無線機は「命のバトン」
もし無線が途絶えたり、聞き間違いが発生したりすれば、正面衝突という最悪の事態を招きかねません。そのため、2月の厳しい寒さで指が動かなくなっても、PTTスイッチ(送信ボタン)を押す動作だけは確実に行わなければなりません。
2. 2月の現場を狂わせる「焦り」の正体
なぜ2月は事故のリスクが高まると言われるのでしょうか。それは、ドライバーも警備員も「寒さ」によって無意識に焦っているからです。
ドライバーの心理:早く暖かい場所へ
冬のドライバーは暖房の効いた車内にいますが、路面凍結や雪による渋滞でストレスを溜めています。 「なんでこんな寒い中、止められなきゃいけないんだ」 その不満が、強引な割り込みや信号無視に近い挙動を生みます。私たちは、その焦りを受け止め、いなす「心のクッション」にならなければなりません。
警備員の心理:身体の硬直と思考の停止
気温がマイナスに達する現場では、人間の脳は生命維持を優先し、複雑な判断能力を低下させます。 「早く流して、次の交代まで時間を進めたい」 この小さな油断が、無理な放流(クリアランス不足)を招きます。プロの警備員は、自分の身体が冷え切っている時ほど「今、自分は正常な判断ができているか?」と自問自答するストイックさが求められます。
3. 深掘り:片交における「クリアランス」の美学
片側交互通行における最大の技術は、**「クリアランス(車両がいなくなった空白の時間)」**をいかに最適化するかです。
詰めすぎず、開けすぎず
- 詰めすぎのリスク: 反対側の先頭車両と、こちらから流した最後尾がすれ違う際、道幅が狭い場所では接触の危険があります。
- 開けすぎのリスク: 待ち時間が長くなると、ドライバーのイライラが爆発し、強引な突破を招きます。
2月の現場では、路面が凍結している可能性があるため、通常よりもクリアランスを「3秒から5秒」長く取ります。この「余裕」こそが、プロの優しさであり、安全への執着です。
4. 2月の夜勤、孤独を埋める「無線のぬくもり」
夜勤の現場。街灯もまばらな山道で、一人で旗を振っていると、世界に自分一人だけが取り残されたような錯覚に陥ることがあります。
そんな時、ポケットの無線機から「……こちら上り、異常なし。そっち、大丈夫か? 冷えてきたな」と、相勤者の声が聞こえてくる。 その声は、業務連絡以上の意味を持ちます。 「自分を見守ってくれている仲間がいる」 この感覚が、過酷な夜を乗り切る最大のエネルギーになります。私たちは一人で立っていますが、決して独りではないのです。
5. これから警備を始める人へ:2月を越えれば「顔」が変わる
もしあなたが、この寒い時期に警備の仕事を始めたばかりなら、今はただ辛いだけかもしれません。しかし、2月の過酷な現場を相棒と共に守り抜いた時、あなたの警備員としての「顔」は確実に変わっています。
それは、周囲の状況を冷静に俯瞰し、仲間の意図を汲み取り、どんな悪条件下でも市民の安全を最優先できる「プロの顔」です。
まとめ:安全は、二人の信頼の間に生まれる
片側交互通行は、計算式だけで成り立つものではありません。 無線機の向こう側にいる相手を信頼し、ドライバーの心理を読み、自分の限界を自覚する。その積み重ねが、事故ゼロという結果を作ります。
2月の冷たい風の中でも、私たちの送るサイン一つで、街の物流と生活は守られています。さあ、今日も無線機のチェックを終えたら、誇りを持って現場へ向かいましょう。
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